先日は、北大総合博物館の大原昌宏先生から、嬉しいお知らせをいただきました。
東京新聞10月21日付社説「週の初めに考える『沈黙の春』と原子力」
「近藤先生
ご無沙汰しております。
東京新聞に「沈黙の春」に関連させた社説がでたようです。ご存知かもしれませ
んが。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012102102000148.html
大原先生 ありがとうございました。
東京新聞が、10月21日 社説で「重大な汚染と危険を孕む原発推進の問題とレイ
チェル・カーソンの『デュイ氏解任という内から国を壊す行為』への抗議の精神
に関連しての論説」がなされていることは、いま非常に大切な指摘です。大いに
励まされました。(添付ファイルをご参照ください:なお同文を末尾に付記しま
す)。 学習テキスト「失われた森 レイチェル・カーソン遺稿集」では、その
14章に「デュイ氏解任」があります。
さて、レイチェル・カーソン著作「海の中」学習の集いにどうぞご参加ください
ますようご案内申し上げます。
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東京新聞社説 2012年 10月21日http://www.tokyo-np.co.jp/image/head_logo.gif
【社説】
週のはじめに考える 「沈黙の春」と原子力
2012年10月21日
先日、農協が原発と農業は共存できないと宣言しました。それは農業に限らないでしょう。私たちは自然なくして生きられず、共に暮らしているのです。
自然環境について言えば、今年は、あのアメリカの海洋生物学者レイチェル・カーソンが「沈黙の春」を出版してからちょうど五十年になります。
その本は述べます。…食料増産の中で農薬が大量に使われ、鳥や虫などが死に、春は黙りこくってしまった、と。
◆巻き起こった大論争
誤解のないように説明をしますと、彼女は農薬一切の使用禁止を言ったのではありません。その毒性、生命体に対する極めて強い影響力について、農民、国民によく知らせないまま使わせているのはおかしい、と言ったのです。
アメリカでは大論争を巻き起こしました。農薬散布を勧めていた政府や、農薬を製造する化学工業界などが強い圧力をかけました。同調する学者もいました。「殺虫剤の使用をやめたら害虫の支配する暗黒の時代がやってくる」と。
当時のケネディ大統領は、大統領科学諮問委員会に農業委員会を特に設け調べると約束しました。その調査の結果、委員会は、カーソンの告発が出るまで、国民は農薬の毒性を知らされていないことが明確になった、と報告したのです。
悪い情報も開示せよ、と求めたのです。よい効能ばかりを聞かされてきたアメリカ国民は、やっと危険性を知らされるわけです。
半世紀も前のことですが、それが今の原発問題と、何と似ていることか、また似ていないことか。
似ているのは、国民が危険性をよく知らされなかったこと。それが政府や業界、御用学者らによっておそらくは覆い隠されてきたこと。似ていないこととは、悪い情報の開示が日本ではなお不十分だと思われることです。
◆国を内から滅ぼすもの
国が運転の許認可をしている以上、国民にはその良い面と悪い面を知る権利があります。
また、政府が十分だと見なしても、国民の大方が不十分と考えれば、それは十分ではないのです。政治家は説明責任という言葉をよく口にしますが、軽々に使われては困ります。それは悪い情報も開示した上で、論理的に相手に通じなければなりません。
カーソンに話を戻せば、「沈黙の春」出版のずっと前、一九五三年八月、彼女の投書がリーダーズ・ダイジェストに載りました。
訴えはこうでした。
「…自然界の真の富は、土壌、水、森林、鉱物、野生生物等、この大地の恵みの中にあります。将来の世代のためにこれらを確実に保存しなければならず、利用するには、広範囲の調査に基づく緻密な計画を立てねばならない。これらのものの管理は政治の問題とは全くちがったものなのです」(ポール・ブルックス著「レイチェル・カーソン」新潮社より)
それは工業化社会へ急速に向かうアメリカ、また世界への警告でした。
投書は、また彼女の元上司を解雇する非を指摘します。
当時の大統領は、共和党に担ぎ出されたアイゼンハワー。彼は防衛産業に強くGM社長のウィルソンを国防長官に、国際派の弁護士ダレスを国務長官に任命するなど財界、民間人を登用(この時期に軍産複合体制が確立)。
その中でクビを切られたのが、キャリア三十五年、人望篤(あつ)く公共の自然の収奪に断固反対してきた魚類野生生物局長アルバート・デイ氏。クビを切ったのはビジネス界から来た内務長官。
投書はこう結ばれていました。
「自然保護の問題は国家の死活にかかわります。政治(政略)的考えの行政官は資源の乱用と破壊の暗黒時代に引き戻す。国防に熱心な一方、内側から国を滅ぼすものに無関心ではいられない」
内側から国を滅ぼすとは、何と厳しい警告でしょう。しかし彼女の学者としての真剣さがそう言わせるのです。
◆告発から半世紀を経て
同じように、福島原発事故を経験、また見聞した農業従事者らは思わざるをえないでしょう。都市生活者が恐れるべきは、その体感のなさかもしれません。農協の将来的な脱原発宣言とは、そういう意味合いを日本に与えています。
殺虫剤の代表格DDTは大多数の国で使用禁止になりました。他方、原発事故で降る放射性物質は自然をひどく、かつ長く汚染し、核のごみは半永久的に残ります。
「沈黙の春」の告発から半世紀。その教示を、私たちはずいぶん学んできましたが、まだ学びきれていないものもあります。それは核のもたらす汚染であり、カーソンなら国を内側から滅ぼすもの、というかもしれません。
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- 2012/10/23(火) 19:10:44|
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レイチェル・カーソン北海道の会の皆様
学習会ご参加の皆様
お力添えいただいています皆様
秋も深まり、寒さも次第にましてまいりました今日この頃、お見舞い申し上げ
ます。
皆様、お元気でおれらましょうか。
さる9月21日には、レイチェル・カーソン日本協会 原 強 様から、当会に
DVD30枚が寄贈されました。
これは、「沈黙の春」出版50年記念として1988年~2007年に発行された、レ
イチェル・カーソン日本協会(JRCC@mb6.seikyou.ne.jp)の会報を
記録保存することを目的にPDF化しデータ保存したDVDであります。
当会では、心からの感謝を込めてこの貴重な記念の資料を拝受させていただき
まして、今後活用させていただくつもりであります。
原 強 様はじめ関係各位の長期にわたります尊いご活動ならびにご尽力対しま
して、敬意を表し感謝を申し述べさせていただきます。
当会では、このDVDを当会へのカンパをかねて500円でおわけさせていただきた
く存じます。ご希望の方はどうぞお申し出ください。
9月27日の学習の集いでも、紹介されまして参加者の多くが入手されました。
さて、レイチェル・カーソン著作「海の中」学習の集いにどうぞご参加ください
ますようご案内申し上げます。
10月25日(木)
18:15-20:40
北海道大学遠友学舎(北18条西7丁目)
「失われた森 レイチェル・カーソン遺稿集」
第3章「私の好きな楽しみ」
解説ご担当:岡部 賢二 様
(集英文庫、880円、370頁)をテキストにして学習いたします。
9月27日(木)は沼田勇美様によります、図書「失われた森」についての特徴
などをまとめてお話ださり、
また、第1章については、沼田様の海洋調査などご専門分野の貴重な経験を交え
て解りやすく解説してくださいました。
私たちは、多くを学ぶことができ、さらに読み進め学びたいとの気持ちが湧いて
まいりました。
どうもありがとうございました。
そのあと、美馬真宏様が「長倉洋海『私のフォト・ジャーナリズム』(平凡社
新書/2010)」を読んで、強く印象に残ったところを、詳しく抄録してくださり、
文章にまとめて資料としてわたしてくださいました。そうして、それらを心を込
めて話して下さり、参加者は多くをまなぶことができました。ありがとうござい
ました。
10月25日は、岡部様にお話をしていただけます。
皆様には、ご参加くださいますようご案内申し上げます。
気温変化も大きい頃ですので、くれぐれもご健康に留意されご活躍ください。敬具
2012年10月11日
近藤 務
下記には、「失われた森」の目次とご担当を記述させていただきます。
その目次を同図書から引用し、示します。
( )ご担当をいれさせてい
ただきます。
<第1部>
1.海のなか 1937 (沼田勇美様):9月27日を予定しております
2.私の好きな楽しみ 1922 (岡部賢二様):9月27日を予定しております
3.野生生物のための闘い/チェサピーク湾のウナギはサルガッソー海をめざす
(児玉 諭様)
1928
4.自然界の空のエース 1944
5.鷹の道 1945
6.思い出の島 1946
7.マッタムスキート―国立野生生物保護区 1947
<第2部>
8.『潮風の下で』に関するイールズ夫人宛てのメモ 1942ころ
9.失われた世界――島の試練 1949
10.「本と著者の昼食会」での講演 1951
11.クロード・ドビッシー作曲『海』のアルバム解説
ナショナル交響楽団のための慈善昼食会での講演 1951
12.全米図書賞受賞の言葉 1952
13.自然を描く意図 1952
14.ディ氏解任 1952
15.『われらをめぐる海』第2版の序文 1961
<第3部>
16.たえず変貌するわれらの海辺 1958
17.野外観察ノートから 1950
18.海辺 1953
19.われらをめぐる現実の世界 1954
20.生物科学について 1956
21.フリーマン夫妻への二通の手紙 1956
22.失われた森――ポック夫妻への手紙 1956
23.雲 1957
<第4部>
24.消えゆくアメリカ人 1959
25.生物学を理解するために 1960 /『アニマル・マシン』への序文 1964
26.明日のための寓話 1962
27.全米女性記者クラブでの講演 1962
28.『沈黙の春』のための新しい章 1963
29.ジョージ・クライル・ジュニアへの手紙 1963
30.環境の汚染 1963
31.ドロシーフリーマンへの手紙 1963
学習テキスト
「失われた森」(レイチェル・カーソン遺稿集;リンダ・リア編、集英社文
庫:880円税込)、
各章の担当者を決めて、毎回1~2章づつ進めるとうことで、進めたいと考えま
す。
--
近藤 務
- 2012/10/12(金) 06:07:58|
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10月25日(木)
18:15-20:40
北海道大学遠友学舎(北18条西7丁目)
「失われた森 レイチェル・カーソン遺稿集」
第3章「私の好きな楽しみ」
解説ご担当:岡部 賢二 様
(集英文庫、880円、370頁)をテキストにして学習いたします。
9月27日(木)は沼田勇美様によります、図書「失われた森」についての特徴
などをまとめてお話ださり、
また、第1章については、沼田様の海洋調査などご専門分野の貴重な経験を交え
て解りやすく解説してくださいました。
私たちは、多くを学ぶことができ、さらに読み進め学びたいとの気持ちが湧いて
まいりました。
どうもありがとうございました。
- 2012/10/12(金) 06:06:19|
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